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  • yusuke-jimbo

蘭陵王Ⅱ

中国ドラマ「蘭陵王」を全話視聴したので、感想を書こうと思います。

以下強烈なネタバレを含みますので、まだ見てない方は急いで全話見ましょう。






前回の記事で「今の所宇文邕が一番好き」と書きましたが、見終わった後は以前にも増して宇文邕が好きになりました。このドラマで一番好きなキャラクターで、話が進むにつれてより一層かっこよくなっていきます。誇り高く不遜でありながら器は大きく、ヒロインの楊雪舞に対する態度もライバルの高長恭(蘭陵王)に対する態度も大変男らしく好きにならないわけがありません。

最初は高長恭(蘭陵王)とお互いの命を狙い合っていましたが、途中からは認め合い戦わないどころか協力して戦うこともありました。二人が共闘した後語り合いながら酒を飲むシーンは良かったです。停戦していたとはいえ主人公高長恭(蘭陵王)の敵が敵国の皇帝ではなくむしろ身内の皇太子高緯になっていきます。

高長恭が皇帝になった高緯に毒酒を賜り自害する際、妻の楊雪舞を宇文邕に託す描写は感動しました。自国の斉では安全が確保されないからと、敵国である周に自分の死後妻を亡命させます。宇文邕にも手紙を残し「雪舞を託せる人間は貴殿をおいて他にいない」と書き、宇文邕ももちろんライバルの期待に応え好敵手を不本意な形で失ったことを嘆きます。

唐沢寿明が演じた「白い巨塔」の財前五郎に似ていましたが、宇文邕の方はかっこよさが爆発するシーンが何度もありました。


そしてこのドラマを語る上で欠かせない登場人物がニキータ・マオ(毛林林)演じる「鄭児」です。

このニキータ・マオは「蘭陵王」に出演してから評価が急上昇したそうですが、それも納得の超怪演。一時期は他の出演者全員を食うぐらいの存在感を放っていました。史実の鄭妃と馮小憐から作られたオリジナルキャラクターでしたが、このドラマの超重要人物です。

美しくも稀代の悪女なんですが、想いを寄せる高長恭(蘭陵王)に褒められたときに見せた純粋な笑顔などは大変印象的でした。彼女じゃないと務まらない役で、彼女にとってのハマり役だったと思います。

結局は高緯の暴走と斉の滅亡はこの女が原因で視聴者の恨みを一手に買うのですが、それでも彼女の魅力が色褪せることはありません。


「蘭陵王」を見てから斉の後主・高緯についてちょっと調べたんですが、とてつもない暗君です。劉禅がかなりマトモです。配下の名将・斛律光(こくりつこう)を謀反の疑いで殺し、高長恭を自害させ、犬などの動物に官職を与えたうえに蠍のたくさん入った穴に人を落としてもがく様を見て楽しんでいた等斉が滅びるのも自明の理といえるでしょう。ドラマでは根は暗愚ではないものの、愛する鄭児にそそのかされて道を誤るという描写ですが、雪舞を愛していても皇帝としての役職を全うした名君宇文邕との差がはっきりと出ています。


それからドラマの冒頭で「高長恭は1年後に死ぬ」と予言され、ヒロインの楊雪舞はその運命を変えようと奔走するのですが、その伏線を裏切るラストはよかったですね。史実でも高長恭がその時期に死ぬのでみんな高長恭が死んでドラマが終わると思っているところ、死ぬのは高長恭ではなく楊雪舞の方だった。 ※ネタバレすいません 歴史書に高長恭の孫の記述があり、ナレーションでその事に触れ「このことは高長恭に子供がいたことを示している」と言って終わる。


総じてこのドラマは大変完成度の高いものでした。中国の歴史ドラマで平均視聴率No.1との触れ込みでしたが確かに今まで見た中国歴史ドラマで一番面白かったですね。オリジナルキャラも多かったですが、どの登場人物にも個性があり魅力的でした。またコメディの部分とシリアスな場面のメリハリもついており最後まで楽しんで見れました。長編ドラマは半分を過ぎると「あと何話で全話見終わる」と思ってしまい、目的が「最終話まで見る」に変わってしまうこともあるのですが全46話で惰性で視聴することもほとんどありませんでした。


中国は「蘭陵王」に「岳飛」に「則天武后」も作ったんだから、次は「光武帝」のドラマを作ってくれませんかね?「三国志」も「項羽と劉邦」も「水滸伝」も作って人気の題材は出し尽くしたので、中国史上屈指の名君の生涯をドラマにしてほしいです。「曹操」や「趙雲」といったスピンオフを作るより別の人物、別の時代にスポットライトを当ててほしいです。おそらく光武帝のドラマを作るなら先に秦の始皇帝のドラマが作られそうですが。

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