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曹操 Three Kingdoms

最終更新: 2019年7月31日

前回中国ドラマ「Three Kingdoms」について長ったらしく書きましたが、今回から各登場人物についてもう少し深く掘り下げていきたいと思います。主にこのドラマ内での曹操について語ります。





「Three Kingdoms」を見る前にネットの評判をチラッと見ましたが、この曹操役の役者の演技は絶賛されていました。「曹操役の俳優の演技を見るためだけにでもこのドラマを見てほしい」と書いている方もいました。


曹操役は 陳建斌 (チェン・ジェンビン)という方だそうで1970年生まれ、曹操を演じていた時の年齢は38~39歳。中国の俳優事情はよく知りませんが、中国が国家的プロジェクトとして制作したドラマの主役中の主役を任されるだけあって相当な大物、もしくは相当の評価を受けていると容易に想像できます。ほかにも時代劇では孔子や雍正帝なども演じているようです。


正直日本人が抱いている曹操のイメージとはルックスではかけ離れているような気もしますが、前評判のとおりこの方の演技は素晴らしかったです。吹替版声優の樋浦勉氏の力がすごいのではないかと思って中国語版を少し見ましたが、中国語がわからない僕でも彼が名優であることが十分わかりました。樋浦氏はオリジナルの役者の演技に寄せているような印象を受けました。もちろん吹き替えの樋浦氏も超名演なんですが。


袁術が皇帝を僭称したときのバカ笑い「わっはっはっはっは。袁術め、危うく笑い死ぬところだったぞ」、官渡の戦いでの袁紹との会談でずっと下手に出ていたのに作戦の準備が完了するや「袁紹!わしがお前なら、絶対に和睦などせぬ!」と言ってまたもやバカ笑い「わはははは。わはははは。・・・はーはっはっは」などのシーンは三国志なのに笑ってしまいました。大爆笑のシーンです。


従来の三国志作品では曹操は悪役に描かれることが多かったのですが、このドラマの曹操はまさしく風雲児。有能で頭も切れる上に人を用いるのも上手い。早くから劉備3兄弟に目をつけ、仲間にしようとする。そして劉備も、曹操のことを「聡明で弁も立つ上、我々を軽んずる態度もない」と頼りにしている描写もある(反董卓連合の時のみ)。曹操と劉備の仲が良かったころの絡みは三国志ファンとしては嬉しい限りでした。僕が三国志の中でも超重要かつ最高の名場面だと思う「酒を煮て英雄を論ずる」の場面。三国志演義※1では劉備が雷を恐れるフリをして曹操の警戒心を解くという結び方でしたが、「Three Kingdoms」では曹操が劉備のことを「取るに足らない小物」と捉えることはありませんでした。


※1 三国志演義・・・中国明の時代に書かれた、後漢・三国時代を舞台にした通俗歴史小説。正史(歴史書)三国志をもとにしつつも民間伝承や講談なども取り入れ「三国志」の普及に大きな役割を果たした。中国四大奇書の一つ。


初めて横山三国志を読んだ時はこの場面の重要性に全く気づきませんでしたが、よく考えると本当にすごい場面ですね。三国志の主人公にしてライバルの曹操と劉備がまだ若いころ、自分たちを凌ぐ勢力がまだまだ存在している中で台頭しはじめた曹操が無名で実力を持たない劉備に「今の天下で英雄と呼べるのは君と私だけだ!」と断言する。

もちろん原作はこんなにすんなりと曹操がセリフを言うわけではなく、そこに至るまでの二人の会話が素晴らしいです。

全部書くと長くなるので、ちょっとだけ書きます。


曹操「ところで玄徳(劉備)殿。今の天下で英雄と呼べるのは誰だと思う?」

劉備「袁紹殿は四世三公の名門の家柄にして・・・(中略)英雄と呼べるのではないでしょうか?」

あんな奴は雑魚だと否定する曹操

その後袁術、呂布、劉表、劉璋、馬騰、張魯、孫策、公孫瓚などの群雄を挙げる劉備

全員否定する曹操

「いいか、英雄というのは、胸に大志と智謀を抱きつつも・・・(中略)のような人間のことを言うのだ」

劉備「そのような人物が今の天下にいるでしょうか?」

曹操「いる!」

劉備「!!?」

曹操「君と私だ!」


めちゃめちゃアツくないですか?三国志に興味ない方にもカッコよさが伝わると思います。「英雄と呼べるのは君だ!」ではなくて「君と私だ!」って言っているのも曹操らしくていいですね。Three Kingdomsでもほとんどこの通りでしたが、劉備が英雄について曹操の名前を決して言わないのは意図的に見えて暗に自分と曹操が同類であるという意思表示なのでは?との印象を受けました。


また話は少々脱線しますが、横山三国志において曹操が王允より董卓暗殺と七星剣を託されるシーンでのナレーション「魏の曹操が三国志の真の主人公と言われる・・・(中略)曹操このとき35歳であった」にもものすごい衝撃を受けました。1巻1話から劉備が登場してずっと彼を中心に話が進んでいく中4巻あたりで曹操初登場、その回の最期のコマで劉備は曹操のことをかなり意識し「劉備の予感は的中する・・・(中略)後年曹操は劉備のライバルとして彼の前に大きく立ちはだかるのである」とまたもナレーション。この時点で「劉備=主人公 曹操=ライバル」という構図が頭の中に確立していたのに、「実は曹操が主人公やで」と言われたときの衝撃は18歳で渡独したときの比ではありません。これに匹敵するのは評論家呉智英氏の著作「バカにつける薬」を読んだときくらいです。あとギタリストっぽいことを言えばマルチン・ディラーの演奏を初めて生で聴いた時も。

まあ「真の主人公」は曹操でも横山三国志はその後も「劉備=主人公 曹操=ライバル」の構図で進んで行くのですが。


話がそれました。


このドラマの曹操があまりにも有能過ぎるので赤壁の戦いなどはどうなるのだろう?と思っていましたが、周瑜や諸葛亮の登場によって違和感なく面白く見れました。赤壁の戦いの時はかなり影が薄くなっていましたが。劉備との漢中争奪戦も曹操は敗れるのですが、曹操が急に無能に見えるようなことはなかったですね。

漢中争奪戦で曹操と劉備は時を経て再び顔を合わせるのですが、そのシーンも良かったです。曹操が「誰がそなたを十八鎮諸侯に入れてやった?呂布に徐州を追われた時、誰がそなたの世話をしてやった?」と劉備に問いかけても、劉備は曹操が幼帝を傀儡とし漢の国を衰えさせたこと、これまでの曹操の悪行の数々を挙げるだけで曹操の問いには答えません。この言い合いは曹操に分があると思うのですが・・・


またまた閑話休題。


僕が蒼天航路※2の中で一番好きな箇所も漢中争奪戦にまつわるところです。


※2蒼天航路・・・この一つ前の記事を読んでください


劉備が漢中に攻めてきたと知り、宮中で会議をする曹操。嫡男曹丕が「大王(曹操)が行くまでもありません」と言上し、曹操も「ほう、子桓(曹丕)、そなたに良い策があるのか?」と聞き返す。内容は「住民の移住が完了した今、漢中は単なる軍事拠点で魏にとっては鶏肋(鶏の肋骨。持っていても意味はないが、捨てるには惜しい)。ここに劉備軍をおびき寄せ都市ごと燃やしてしまう」というもの。「そのような事は戦地にいる兵のことを思えばとても言えることではない!!」激怒する曹操。「自軍の戦ですら冷えた言葉で語る貴様らには分かるまい!」曹操は続け「同じ天の下、拠る地を求めて駆けずり回った男が招いている! 奴が呼ぶから俺は行く! 俺と劉備は・・・天の理をかけて殺し合うのだ!!」

このシーンは一回目に読んだ時もカッコいいと思ったし、二回目に読んだときはこみ上げてくるものがありましたね。

それから巻をまたいで「挙兵から30年・・・残っているのは・・・無名から這い上がってきた劉備、お前一人だ」というセリフもすごくよかったです。この時点で呉の孫権は表面上は魏に臣従しており、曹操の支配下にないのは蜀の劉備だけでした。曹操の完璧超人っぷりが目立つ蒼天航路ですが、ここに来て曹操のライバルは劉備だったんだと再認識させられます。ちなみに僕はオリジナルキャラの水晶との物語も大好きです。あれが面白かったから蒼天航路の虜になったようなモンです。


以上、蒼天航路の話でした。



この後に曹操は亡くなるのですが「Three Kingdoms」での曹操の死のシーンもよかったです。特に曹丕との問答で「私はもうすぐ死ぬ・・・死ぬ前に本当のことを聞かせてくれ」というセリフは泣けましたね。死によって曹操は物語から退場します。



このドラマの曹操は俳優も吹き替え声優も怪演だったんじゃないでしょうか?

「新三国志」の主役に相応しい脚本、演出、俳優でした。

宛城での敗戦を描くと曹操の有能さにケチがつくから言葉で語られるのみになったんでしょうか?荀彧も相当有能ですが曹操を凌ぐほどではなく、おまけに賈詡まで登場すると曹操の頭の良さが際立ちませんからね。


ほとんど曹操と劉備の話になってしまいましたが、Three Kingdoms以外の 曹操についてもまたいつか書けたらと思っています。この記事では横山三国志や蒼天航路での曹操にも言及しましたが、まだまだ曹操という人物の凄さ、魅力は全然書けていません。物語ではなく、正史三国志の曹操の好きなエピソードなどもっと詳しく書きたいです。


次回はThree Kingdomsでの劉備についての記事を予定しています。ギターや音楽についてはThree Kingdoms関連が終わるまで書かないと思ってください。

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