前回の記事についての補足をちょっとだけ。
ベネズエラワルツというのはその名の通りベネズエラのワルツなのですが、4分の3拍子、8分の6拍子、4分の4拍子、4分の2拍子などが同じ小節内でも同時に進行して複雑なリズムを生み出すのが特徴です。また南米のワルツはステップが小刻みなのもヨーロッパのワルツと大きく異なる点です。
昨日演奏したラウロの4作品は全てがベネズエラワルツというわけではなく、ビルヒリオ(この作品を世界初録音したシャロン・イズビンのCD解説によれば作曲者ラウロの孫の名前)は別名タキラのバンブーコといい南米コロンビアの山岳地帯の音楽、バンブーコのスタイルで書かれています。
さて、ラウロといえばギターファンにとっては4つのベネズエラワルツの作曲者として有名です。この4曲のうち、とくに第2番と第3番が名高く愛奏されています。僕が演奏した4曲はむしろマイナーな部類ではないでしょうか(というかクラシックギター自体がマイナー)。4つのベネズエラワルツは僕は演奏したことはありませんがどれもいい曲で、全部弾いても10分かからないという手頃なレパートリーです。
またボルヘス、ラウロ同様ベネズエラのギター音楽を語る上で欠かせない偉大なギタリストにアリリオ・ディアス(1923-2016)がいます。巨匠セゴビアの弟子で、今日ボルヘスやラウロの作品を入手し演奏できるのもそれらの楽譜を集めて校訂しまとまった形で出版した彼の功績によるところが大きいです。
このアリリオ・ディアス生誕80周年の2003年にこれまた巨匠ジョン・ウィリアムズが全曲ベネズエラの作品のみによるCD「エル・ディアブロ・スエルト(解き放たれた悪魔)」を発表しました。同じセゴビア門下の兄弟子にあたる偉大な先輩へのトリビュート作品です。
このCDはジョンのCDの中でも「バリオス作品集」に並び僕が最も好きなもののひとつです。ベネズエラワルツが好きなのも明らかにこのCDの影響です。この音源は現在Youtubeで全曲聴くことが可能です。
それで今回ベネズエラ作品を弾くにあたり、このCDのライナーノートを読み直したのですがジョン・ウィリアムズ本人が書いた解説が大変素晴らしいものでした。残念ながらYoutubeでは演奏だけで曲の解説はありません。ベネズエラという国について、ベネズエラと撥弦楽器の関係について、ベネズエラの舞曲と音楽形式について大変詳しくなおかつわかりやすく書かれています。高校生のときにも読んだはずなのに、今改めて読むと大きな感動を覚えます。今はYoutubeでなんでも聴ける世の中になりましたが、このような素晴らしい文章も残していってほしいですね。
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