完全に趣味のことを。
どうしても書きたかったので。
僕はこれを書きたくてブログを始めたと言っても過言ではありません。
三国志
二世紀末から三世紀にかけての中国の歴史物語。
僕は知識は偏ってはいるのですが歴史が大好きで、特に中国の古代史には大変興味を持っています。中でも三国時代は日本人に一番愛されている時代で、僕もその例に漏れず子供のころから三国志に慣れ親しんで来ました。
始まりはやはり横山光輝の漫画「三国志」で、そこからゲームやアニメやドラマ、果ては正史三国志と手当たり次第に手をつけていきました。もちろん蒼天航路※1も読みました。
※1 蒼天航路・・・1994年から2005年まで「モーニング」に連載された 原作・原案 李學仁 、作画 王欣太 による三国志漫画。それまで蜀を中心に描かれる三国志作品が主流だった中、魏の曹操を主人公 に新しい解釈と豪快なタッチで描き累計発行部数1800万部を超えるヒット作となった。
そして日本に帰ってきてから、2010年中国が25億円を投じて国家的プロジェクトとして制作した長編歴史ドラマ「三国志 Three Kingdoms」を全話見ました。
上の動画は予告編です。1話約50分ほどで全95話。三国志マニアの僕でも途中飽きそうになる時がありました。ちなみにYoutubeに全話日本語版があります。
1994年にも中国中央電視台というテレビ局が実写版三国志を制作しているのですが、こちらのほうは「旧作」もしくは「三国演義」と呼ばれ2010年版のほうは「新作」もしくは「Three Kingdoms」と呼ばれることが多いようです。
全然本題に入れてなかったのですが、今回はこの「Three Kingdoms」について長く語ろうと思います。ただとても一回では書ききれないので、全体的な感想だけを。それぞれの登場人物についてはまた別の記事で詳しく書くつもりです。
まずタイトルの「Three Kingdoms」についてはそのまま「三人の王」という意味ですが、これは1920年代におそらく初めて本格的に英語に翻訳された時の三国志の題名が「Romance of Three Kingdoms」だったことに由来していると思われます。
結論から言いますと、この「Three Kindoms」はとても素晴らしい作品でした。ネットのレビューなどを見てもおおむね好評のようです。中国語音声日本語字幕で見るのもいいですが、個人的には日本語吹き替えの声優さんにハズレが全くなく全員名演だったので日本語吹き替え版をオススメします。
作品内では黄巾の乱は描かれず、董卓が都を牛耳り王允が曹操に董卓暗殺を依頼するところから始まります。最後は五丈原の戦いの後、司馬懿一族が魏の実権を握るまでをダイジェストで。蜀や呉の滅亡は描かれません。南蛮征伐もありません。ちなみに出番や存在がほぼ丸々カットの人物も多数います。僕が三国志内ではかなり好きな典韋の戦死シーンは言葉で語られるのみで、張遼の合肥での大活躍もありません。夏侯淵と夏侯惇も全然出番がなく、甘寧もほとんど出番なし。 魏の五将軍ですら影が薄く賈詡にいたっては作品内で存在していません。しかしその代わりなのか、陳宮や許攸など意外な人物がスポットライトを浴びてもいます。
本当にいい作品で褒めていたらキリがないのですが個人的に特に良かったと思う場面、演出と残念だったことを挙げたいと思います。
まず一番感銘を受けたのは「三顧の礼」とそこへ至るまでのストーリーですね。
この作品では曹操を主役中の主役として描いているのですが(曹操は1話から登場し劉備3兄弟が本格的に登場するのは3話から、3兄弟の出会いも描かれず桃園の誓いがダイジェスト気味に流れるのみ)、官渡の戦いが終わって曹操が中国の大半を平定するころにはちょっとダレ気味になり見ているのもしんどくなってきます。これは蒼天航路でも起きた現象でした。しかし、その直後に物語の視点が劉備に移り彼の人生が大きく動き出します。司馬徽と出会い、軍師の必要性を説かれるシーンでは本編を邪魔しない程度にBGMが流れ気づかない内に僕は涙を流していました。「今そなたに必要なのは物事を俯瞰して見て正しい戦略を立てられる軍師」というセリフは本当に良かったですね。何がいいのかわかりませんが。
三顧の礼へのお膳立てとなる重要なシーンですが、ここら辺は見ていてとても楽しかったです。官渡の戦いで中だるみになったら主役が劉備へ移り、諸葛亮が登場するというのは本当に三国志ってよく出来ているなあと思いました。羅貫中恐るべし。
勝手に三国志を分析すると、やはり主役級の登場人物が何人もいるというのが大きな魅力だと思います。間違いなく三国志というのは曹操と劉備二人が中心の物語なのですが、曹操を主人公にすると劉備がライバルとして大きな魅力を発揮し、劉備を主人公にすると曹操が主役を食うぐらいの存在感を見せつける。そこに数えきれないくらいのキャラクターが華を添える。だから三国志作品はどれもおもしろくなる。
それから孫堅の死の場面。この作品では船に乗って移動しているところを劉表の不意打ちに会い傷だらけになって孫堅は息絶えるのですが、全身に矢が刺さった孫堅を黄蓋や部下たちが船の内部に避難させます。そこには幼い孫権も同席しているのですが、死期を悟った孫堅が黃蓋に呉の未来と息子孫権を託す描写は赤壁の戦いの苦肉の策への伏線になっていて感動しました。もちろんこの段階で僕は赤壁の戦いがどう描かれるのかは知りません。自分の中の三国志の知識で勝手に感動しているだけです。
あとは陳宮の死の場面と呂蒙が魯粛の足を洗う場面。
冷徹な野心家曹操も一番大変な時期を助けてくれた陳宮には恩を感じていたのか、自分を裏切り敵として相対した彼を何とか仲間にしようとします。それでも陳宮の心は変わらず最後は自ら処刑を選びます。もちろん陳宮の才能を惜しんだこともあるのでしょうが僕はここでは曹操の義理や人情といった人間的な部分を見ました。陳宮が捕らえられて曹操の前に引き出された際の二人の会話もとても含蓄のあるものです。曹操は捕らえた敵将の陳宮に終始「公台殿」と敬称を用いているのに陳宮は曹操のことを「孟徳」と呼び捨てにします。そして陳宮は「私を殺せないなら、殺す理由を与えてやろう。私を生かしておくとそなたの過去の悪事をすべて暴露するぞ・・・皆のものよく聞け!ここにいる曹孟徳はかつて世話になった父の義兄弟呂伯奢を勘違いで殺したのだ」陳宮に斬りかかろうとする曹操の家来たちに曹操は「たわけ!公台殿は私の命の恩人だ。何と言われようと平気だ。それに公台殿の言っていることはもっともだ」と言います。そして「気の済むまで私を罵るがよい。そして気が済んだら一緒に飲もう」と。曹操の器の大きさが知れます。ただこの作品の曹操は頭が良すぎるので器の大きいエピソードも計算の上ではないかという疑問も湧くのですが。
最後まで帰順を拒否し、処刑場まで連行される陳宮。最後に曹操は「私が見送ってもよいか」と陳宮の手をとり一緒に処刑場に向かいます。その道中でも「公台殿、そなたが死んだらそなたの母はどうなる?誰が面倒を見るのだ」と問いかけ陳宮も「情けある君主というのは法に照らして裁くとき罪をその家族までは及ぼさず、むしろ最後まで面倒を見るという。母のことは心配ない」と間接的に曹操が優れた君主であることを認め、なおも曹操は「そなたには7歳の娘と5歳の息子がおる。そなたがいなくなったら子供たちはどうなる?」と食い下がります。「彼らはきっと苦労するだろうが、天命を受け入れ強く生きていく。気遣いは無用だ」と陳宮。処刑場に到着し、いざ刑が執行される直前にも曹操は「公台殿、自分を曲げて頼む。考え直してはくれないか?」と最後の最後まで翻意を促します。それに陳宮は一定の理解を示すものの「自分はここで死ぬべきなのだ」と刑は執行されます。処刑の瞬間曹操は背中を向け目を閉じるのですがその場にいた部下に「丞相、なにを泣いておられるのです?」と聞かれ「ほざくな!私は泣いてなどおらぬわ!」と強がります。しかし立ち去る瞬間に曹操は目頭を押さえたのでした。
呂蒙はこの作品では人形劇三国志並に憐れな最期を遂げるのですが、この作品の呂蒙は男らしい顔立ちで髭も似合い性格も無骨でとてもかっこよかったです。
周瑜死後、呉の大都督に就任するも主孫権と劉備(というかずる賢い孔明)の間で板挟みになり外交で大変苦労する魯粛。その魯粛のもとに呂蒙が訪れます。ちなみにこのときの呂蒙の立場は軍内では魯粛に次ぐナンバー2ぐらい。魯粛は「時間もなく疲れているので足を洗いながら話をしてもよいか」と言って下女に足湯を用意させます。その疲れ切った姿を見た呂蒙は下女が足湯を持ってくるやいなや自ら跪いて魯粛の足を洗おうとします。それには魯粛も驚きを隠せず「よせ、子明!そなたほどの者に足など洗わせるわけにはいかん!」と呂蒙を止めますが「いいえ、大都督!私のせめてもの気持ちです。」と魯粛の足を洗う呂蒙。いいシーンでした。呉下の阿蒙にあらずよりも印象深いシーンでした。
以上感動したシーン終わり。まだまだありますがまた後日書こうと思います。
以下残念だったこと。
曹操があまりに有能に描かれているため魏の名将たちの活躍がほぼないのは仕方ないのですが、孫策の江東平定がほとんど端折られたのはショックでしたねえ。孫権がかなり有能に描かれているためか、兄の孫策が割を食った感じです。孫策もかなり偉大なはずなんですがそのように見えませんでした。孫権が後を継ぐ際「私は兄に遠く及びません」的なことを言っていましたが全然説得力なかったです。
横山三国志なんかでは(僕が先の展開を知らなかったのもあるのでしょうが)孫策が若くして死んで「孫家は大丈夫か!?」と心配になったのですが、後を継いだ孫権が父や兄に負けないくらい優秀で結局呉を建国するというドラマチックな展開だったのに、「Three Kingdoms」では予定調和的に孫権が後を継いだ印象を受けました。幼いころから孫策よりかなり聡明でしたから。
それからこの作品でのオリジナル設定ですが、劉備が孫権の妹(この作品では小妹って名前だったかな?)との婚礼で呉に赴く際、留守を任された諸葛亮が関羽と張飛と衝突するのですが、諸葛亮は誰もいない時に腹心の馬謖に愚痴を言います。張飛のことを「匹夫」呼ばわりするし、劉備が無事帰ってくると故郷へ帰ろうとします。この劉備陣営を去ろうとするシーンは関羽と張飛を反省させるためとも見れるのでしょうが個人的にはないほうがいいと思いました。諸葛亮ほどの天才でも苦悩したと言いたかったのかもしれませんがこんなシーンがあると後の「出師の表」の内容が台無しになってしまいますから。あんな名文を書いているのに「いや、あんた一回劉備を見捨てようとしたやん」って思ってしまいますからね。まあこの作品では出師の表はそんなに感動するような場面ではありませんでしたが。
もう一つは最終回の司馬懿。これまたオリジナルキャラの「静姝」というキャラクターが登場するのですがこの女は実は曹丕が司馬懿を監視するために送り込んだスパイで、司馬懿はスパイと知りながらも表面上は友好的に接し、後に彼女と結婚します。静珠は司馬懿との子供を身籠るのですが、出産の際に亡くなってしまいます。これは司馬懿の策略で司馬懿は自分の野望のために静珠を殺したことが後にわかるのですが、彼女を殺した自分を責めているのか一人になった時に頭を壁に打ち付けて涙を流します。
これは非情で人間らしさのない司馬懿も静珠のことを実は愛していたという演出ですが、僕は気に入りませんでした。司馬懿には最期まで冷徹な策略家であってほしかったし、男女の愛というのがかなり現代的な価値観なので三国志にそれほど強く反映させなくてもいいのでは?と思ってしまいました。
以上はパッと思いついた残念なシーン。あとは制作陣が悪いせいではありませんが1994年版の「旧作」のほうがよかったと思うところを。
まずは呂布の最期のシーン。旧作では城に劉備や関羽もいてかなり壮大なセット(というか実物のお城を使ったのかってくらい)が遠目からでも分かりましたが「Three Kingdoms」では縁側かってくらい小さなセットでした。いや、あのくらいのセット作るのも大変なんでしょうけど。曹操との会話もかなり狭い空間で行われているようでした。
それから長坂坡の趙雲単騎駆けのシーン。言わずと知れた三国志の名場面中の名場面で三国志ドラマ最大の見せ場なので、「Three Kingdoms」でもとても気合を入れて制作したのでしょうが僕は旧作のほうが好きでした。旧作では名場面にオリジナルの挿入歌が流れるという演出を結構やっているのですが、ここでも趙雲のテーマみたいな歌が流れてとても印象に残っています。この挿入歌も音楽的には別に大した作品ではないのでしょうが、そのダサさが血まみれの趙雲の戦闘シーンと重なって名曲に聞こえてきます。あとは「Three Kingdoms」ではワイヤーなどの技術を使ったアクションが多用されていましたが、旧作のほうは後ろから馬が全力で走って来る中これまた走っている馬から転げ落ちたり、馬上でのアクションシーンなどかなり危険と思われるシーンが多数ありました。CGや技術の発展により役者が危険な目に合うことは減りましたがやはりここは体当たりで必死に撮った旧作の迫力に分があります。
そして群英の会での剣舞。赤壁の戦いで、曹操が呉の総司令官周瑜を寝返らせようと周瑜の旧友の蒋幹を派遣します。周瑜は蒋幹の目的を知りつつも呉の陣内を案内し彼の前で剣舞を舞います。個人的にはこの剣舞は旧作で一番好きなシーンで、挿入歌もとてもいい曲です。カメラワークが悪く周瑜役の役者をカメラに収めきれてない箇所もありますが 作中屈指の名シーンだと思います。
「Three Kingdoms」では似たような場面で周瑜ではなく妻の小喬が剣舞を披露します。かなりアクロバティックで物理的に無理な踊りです。この剣舞のシーンは旧作にはとても及びません。
あとは諸葛亮が言葉だけで王朗を殺すシーンでしょうか。旧作のほうがたたみ掛けるような怒涛の罵倒で迫力がありました。「Three Kingdoms」のほうはちょっと上品にまとめ過ぎましたかね。
結構話が脱線しました。他にもまだまだ書きたいのですが、また後日にしようと思います。この記事は約4時間半をかけて書いて、読むのにも相当な時間と労力がかかると思うのですが、僕のパソコンでは読了時間1分と表示されています。6000字くらいあるんですけどこの記事・・・1分で読めるんですか。僕が読むのが遅すぎるだけなのか・・・
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